暗い。
ここはあまりに暗い。
ネオンの光も遮る都会の死角のような路地裏。
中華料理屋と本屋の間のわずか2mもない隙間。
ここで息を潜めているのは、オレと生ゴミありつきに来たドブネズミくらい。
バイト帰り。仕事を終えた他の仲間達は、飲みに行くやら
彼女と遊びに行くやら、家に帰って録画しておいたテレビを見るやら
嬉々として、夢を見るように疲れを忘れてタイムカードを切って去って行く。
11時。新入りが作った不味い賄いの麻婆豆腐を詰めた袋を
カラス除けのネットに放り込んで、ポケットに突っ込んである
マルボロを一本取り出し火をつける。
20歳。もう20年も生きているんだな、と。ハハハ。大人。オレ。
空を見上げたってなあにもありゃしませんよ。闇だ。
見上げるとビルとビルが幾層にも重なって見え、空を覆い隠している。
20歳になりました。誕生日を今日迎えました。やっぱり鼻眼鏡かえ。
クラッカーかえ。ケーキにチキンかえ。ワハアア。あんま食ったことねぇや。
物心ついたときから中華ばっか。食ったことあるの。炒飯、エビチリ、チンジャオロース。
油っこいのばっか。まあだからこんなラードみたいなツラになっちまったんかもね。
あぁ何で中学卒業して、両親死ぬかねぇ。しかも旅行先で通り魔に殺されるとか。
いまだに思う。こんなのゲームとか映画じゃなきゃありえん、って。
んでオレ、親戚の反対押し切って、いつ戻ってきてもいいように、って
この中華料理屋継ぐとかいっちゃったかねぇ。
あの頃と比べると綺麗なアーケードも、東京にあるようなオシャレなデパートもある
この商店街。その中にあるジイサンの頃から続く遺跡のような小汚いこのお店。
改装しようにも金がない。時々、中学時代の友達が来て
「金無い、金無い」とかのうのうと言ってるけど、おまえらの金無いとはレベルが違う。
振ったって、縄で逆さまに吊るし上げられて布団叩きでガンガンケツひっぱたかれたって、
可愛くて巨乳のネエチャンがゆっさゆっさ誘惑してきたって、ないんよ。
ないない言ってって、その持ってるバッグはなんだよ。担いでるギターはなんぼになんよ。
横におる出来の悪いキャミソール娘への維持費はどこからでてんだよ。バイトもしてねぇのに。
慣れたからいいものの、両親ようこんなのやりくりしとったな。信じられへん。
遠い。遠いんだよ。未来が。
もう最近、裁判所に行くのもダルくて行ってない。厨房と、換気口から粘りついた臭いしかしない
この暗闇以外の居場所が無い。手は火ぶくれで腫れ上がり、鏡を見れば疲れきった間抜けなラード顔。
気を失って飛んでいってくれるものでもない。
続くかも
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